タイトル
第61巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺癌を合併し退縮した巨大肺嚢胞の1例

荒木 恒太1, 平野 豊1, 松本 千晶2, 八杉 昌幸2, 池田 元洋2, 尾形 佳子2, 戸田 博子3, 玄馬 顕一2, 鷲尾 一浩1
公立学校共済組合中国中央病院 1呼吸器外科, 2呼吸器内科, 3病理診断科

背景.肺嚢胞壁は肺癌の発生母地となることが知られており,巨大肺嚢胞でも同様とされる.巨大肺嚢胞の臨床経過は多様であるが増大もしくは不変のことが多く,退縮した報告は稀でありその機序も不明である.今回われわれは巨大肺嚢胞に肺癌を合併し,肺嚢胞の退縮を認めた症例を経験した.症例.72歳男性.主訴は左背部の違和感.胸部CT検査で左肺尖部に壁側胸膜浸潤を疑う4 cm大の腫瘤影を認めた.10年前の胸部CT検査では左上葉に11 cm大の巨大肺嚢胞が存在したが,その巨大肺嚢胞の大部分は腫瘤に置換され,3 cm大の肺嚢胞が残存するのみとなっていた.壁側胸膜合併を伴う左上葉切除+ND2a-2を施行し,病理診断で嚢胞壁と連続性のある腺癌と診断された.CT検査所見の経時的変化・病理所見からは,巨大肺嚢胞の嚢胞壁もしくはその近部に発生した肺癌が巨大肺嚢胞への空気の流入を阻害することで嚢胞が退縮したと考えられた.結論.CT検査の経時的変化と病理所見より,肺癌を合併した巨大肺嚢胞退縮の機序が示唆された1例を経験したので,考察を加えて報告する.
索引用語:巨大肺嚢胞, 退縮, 肺癌

受付日:2020年8月21日
受理日:2020年10月22日

肺癌 61 (1):40─44,2021

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