タイトル
第61巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

急速に進行した肺類上皮血管内皮腫の1例

田中 雄亮1, 松本 勲1, 齋藤 大輔1, 吉田 周平1, 田村 昌也1, 池田 博子2
1金沢大学呼吸器外科, 2金沢大学附属病院病理診断科

背景.肺類上皮血管内皮腫は血管内皮由来の悪性腫瘍で緩徐進行例が多いとされるが,多様な進行形式が報告されている.また,効果的な治療法がないため治療介入に難渋する.今回我々は急速に進行した肺類上皮血管内皮腫の1例を経験したので,報告する.症例.31歳,女性.健診の胸部単純X線写真で異常陰影を指摘された.全身CTとPETで右肺下葉の2.6 cmの結節影と両側多発肺小結節を認めた.右肺下葉部分切除を行い,胸膜浸潤を伴う類上皮血管内皮腫と診断され,経過観察となった.術後6ヶ月で殿部痛が出現し左右腸骨転移と右肺下葉切除断端近傍の再発を認め,術後10ヶ月で椎骨や左大腿骨への転移を認めた.椎骨や腸骨転移による疼痛が生じたが,緩和的照射によって軽減された.術後13ヶ月で右悪性胸水による呼吸困難症状が出現した.ドレナージと胸膜癒着療法を実施したが胸水制御は不能であり,術後16ヶ月で永眠された.結論.肺類上皮血管内皮腫は緩徐進行例が多いとされるが,本症例のように急激な増悪を認める場合もある.有効な治療法がないため,定期検査を継続しながら,適宜対症療法を行う必要がある.
索引用語:肺類上皮血管内皮腫, 肺悪性腫瘍

受付日:2020年8月5日
受理日:2020年11月5日

肺癌 61 (1):45─49,2021

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