第61巻第2号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
腫瘍の自然退縮を認め,腫瘍随伴性小脳変性症を呈した小細胞肺癌の1例
三登 峰代1, 倉重 毅志2, 北原 良洋5, 三村 剛史3, 倉岡 和矢4, 山下 芳典3, 中野 喜久雄1独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 1呼吸器内科, 2脳神経内科, 3呼吸器外科, 4病理診断科, 5広島市立舟入市民病院
背景.傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurological syndrome:PNS)を呈する小細胞肺癌は多彩な病態を呈し,診断に苦慮することも多い.症例.症例は78歳男性.急速に進行するふらつきと呂律困難を呈して入院した.入院6ヶ月前の胸部CTで認めていた,右肺上葉結節影と縦隔リンパ節は入院時に自然退縮していた.免疫グロブリン大量療法(high dose intravenous immunoglobulin:IVIG)による神経症状の改善と合わせて縦隔リンパ節は増大した.確定診断目的の縦隔鏡下リンパ節生検で小細胞肺癌の所見が得られ,抗神経抗体である抗voltage gated calcium channel抗体陽性であったことから小細胞肺癌による腫瘍随伴性小脳変性症と診断した.本症例は抗神経抗体による腫瘍縮小の病態機序が考えられた.化学放射線療法を行い完全奏効となり,その後も長期生存が得られている.結論.PNSを合併した小細胞肺癌では,抗神経抗体による原発巣の自然退縮が考えられる.さらにIVIGと化学放射線療法との併用で,神経症状の改善や長期生存が期待できる.
索引用語:小細胞肺癌, 傍腫瘍性神経症候群, 腫瘍随伴性小脳変性症, 自然退縮, 免疫グロブリン大量療法
受付日:2020年10月30日
受理日:2020年12月9日
肺癌 61 (2):113─118,2021