タイトル
第61巻第4号目次 In Japanese

─ 編集後記 ─

編集後記

瀧川 奈義夫
川崎医科大学 総合内科学4

肺癌の新しい知見を日本語で気楽に読むことは,残暑厳しい中で私にとって涼風となっています.本号にはMETとAIのレビュー,研究論文2報,症例報告8報,短報2編が掲載されています.MET exon14スキッピングの検出については,汎用されているオンコマインとコンパニオン診断であるArcherMET間で不一致が報告されていますが,両者の測定は病院持ち出しとなることや,血漿では組織の半数しか検出されず,診断薬や診療報酬の問題点を指摘しています.AIによるコンピュータ支援診断はCOVID-19肺炎診療で世界的に脚光を浴びましたが,未だ放射線診断医の読影に代わるものはありません.福代らはPD-L1高発現で総腫瘍径が大きい場合,ペムブロリズマブは単剤より化学療法との併用が良いことを示し,福本らは胸腺癌と胸腺腫の鑑別に腫瘍倍加速度が有用と述べています.國政らはNGS解析には検体保存状態の重要性を喚起し,嘉島らは肺癌術後の眼球転移を,有里らはニボルマブによる再発性多発軟骨炎を,梶川らはオシメルチニブ治療中に発症した多発性筋炎を報告しています.大城らは肺紡錘細胞癌に対するペムブロリズマブの奏功例,廣瀬らはロルラチニブの減量隔日投与が有用であったALK陽性肺癌,村田らはEGFRとALK同時変異肺腺癌の小細胞癌転化例,乾らは長期寛解後に副腎転移で再発した肺小細胞癌を報告しています.加藤らは稀有な胸腺癌であるmicronodular thymic carcinoma with lymphoid hyperplasiaを,浅野らは既存の概念にないmyxoid spindle cell sarcomaを報告しています.いずれも私は経験したことのない症例でした.全て目を通す価値がある論文ですので,どうぞご一読ください.

肺癌 61 (4):359─359,2021

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