タイトル
第61巻第5号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (2891K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

免疫チェックポイント阻害薬による治療が奏効した多発骨格筋転移を伴う非小細胞肺癌の1例

日當 悟史1, 千葉 薫1, 岡林 賢1, 青野 ひろみ1, 朝戸 裕子1, 丸茂 一義1
1東京警察病院呼吸器科

背景.非小細胞肺癌での骨格筋転移を認める症例の大部分は,多臓器にわたる転移を伴い予後は数か月と非常に悪いことが知られている.この理由の一つとして腫瘍細胞の転移のメカニズムに上皮間葉転換が影響することが知られている.治療法としては化学療法と放射線療法が主として行われているが効果は限定的であり,免疫チェックポイント阻害薬での治療例の報告は少なくその効果はあまり知られていない.症例.77歳男性.バイクで走行中に転倒し,腰痛,大腿後面および下腿の疼痛を自覚するようになった.その後,起立困難となったことから当院受診.右肺門部に腫瘤影を認め,精査の結果縦隔および腹腔内リンパ節,肝臓,両側副腎,皮膚に加えて,複数の骨格筋内に転移を伴う大細胞肺癌(cT4N3M1c Stage IVB:UICC-TNM第8版)と診断した.免疫組織化学染色ではvimentin陽性,またprogrammed cell death 1 ligand 1(PD-L1)のtumor proportion score(TPS)は95%と高発現していたため,ペムブロリズマブを導入したところ原発巣,転移巣はともに著効が得られ,performance statusも改善した.結論.予後不良とされる骨格筋転移を伴う非小細胞肺癌に対して免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブを使用し,1次治療として良好な治療反応性を認めた.
索引用語:非小細胞肺癌, 多発骨格筋転移, ペムブロリズマブ, 上皮間葉転換, Vimentin

受付日:2021年2月25日
受理日:2021年5月7日

肺癌 61 (5):396─401,2021

ページの先頭へ