タイトル
第61巻第5号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

硬膜転移による視力障害を認めた進行性非小細胞肺癌の1例

増田 優衣子1, 猪山 慎治1, 石塚 志穂1, 赤池 公孝1, 増永 愛子1, 冨田 雄介1, 坂上 拓郎1
1熊本大学病院呼吸器内科

背景.肺癌に関連して視覚障害を呈する症例は比較的稀である.今回我々は,傍鞍部の硬膜転移による左視神経障害のため左眼が失明した進行性非小細胞肺癌の1例を経験した.症例.78歳,女性.進行性の左眼視力障害と咳嗽を主訴に受診され,CTにて左下葉気管支に沿った長径6 cm程度の軟部腫瘤及び縦隔・左肺門に多発リンパ節腫大を認めた.頭部造影MRIでは,頭蓋底の左前床突起近傍に髄膜に接してdural tail signを呈する硬膜転移を認め,視力障害の原因と考えられた.全身精査の結果,肺腺癌cT3N3M1c stage IVBと診断され,遺伝子検査の結果,EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失変異)が陽性であった.オシメルチニブ80 mg/日より治療を開始し,硬膜転移病変に対して定位放射線治療(30 Gy/15回)を行った.オシメルチニブによる重篤な有害事象もなく,視力は著明に改善し,画像所見上も腫瘍の縮小が得られた.結論.硬膜転移により失明に至った進行性非小細胞肺癌に対してオシメルチニブと定位放射線治療が奏効し,視力回復が得られた.
索引用語:肺腺癌, 硬膜転移, 視力障害, EGFR遺伝子変異

受付日:2021年3月16日
受理日:2021年6月2日

肺癌 61 (5):423─428,2021

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