第62巻第2号目次 | Japanese/English |
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─ 総説 ─
炎症性サイトカインインターロイキン-1βを標的としたカナキヌマブによる非小細胞肺癌治療の可能性
後藤 悌11国立がん研究センター中央病院呼吸器内科
近年,免疫チェックポイント阻害薬の臨床導入に伴い,非小細胞肺癌(NSCLC)の無増悪生存期間および全生存期間に改善がみられているが,長期生存率は依然として低い.この原因の1つに,炎症性サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)が,腫瘍微小環境(TME)における腫瘍促進性炎症を誘導して,抗腫瘍免疫応答を抑制している可能性が挙げられる.IL-1βを標的とするヒトモノクローナル抗体であるカナキヌマブは,CANTOS試験において,肺癌の発生率と死亡率を有意に低下させることが示された.カナキヌマブがIL-1β活性を阻害することで,抗腫瘍免疫応答が増強され,腫瘍増殖が抑制される可能性が示唆される.本稿では,腫瘍と炎症との関連性,TMEにおけるIL-1βの役割を述べるとともに,今後のNSCLCの治療選択肢として有効性が期待されるカナキヌマブについて,進行中の臨床研究を概説する.
索引用語:カナキヌマブ, インターロイキン-1β, 非小細胞肺癌, 腫瘍促進性炎症
受付日:2021年7月12日
受理日:2021年11月12日
肺癌 62 (2):81─89,2022