タイトル
第62巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

経気管支生検ののち自然消退したが,4ヵ月後に再増大を認めた肺扁平上皮癌の1例

山口 光1, 武藤 哲史1, 猪俣 頌1, 渡部 晶之1, 尾崎 有紀1, 岡部 直行1, 松村 勇輝1, 塩 豊1, 鈴木 弘行1
1福島県立医科大学呼吸器外科学講座

緒言.癌の自然消退は非常に稀な現象として報告がある.病理学的に肺癌と診断したのちに自然消退したものの,再増大し手術を施行した症例を経験したので免疫学的考察を含めて報告する.症例.75歳男性.20XX年3月,胸部打撲をきっかけに前医で撮影されたCTで右上葉に1.7 cmの結節影を指摘された.4月に当院呼吸器内科で経気管支生検を施行し,肺扁平上皮癌の診断が得られた.5月,当科に紹介となり6月に手術の予定としていたが,手術2日前に腫瘍の位置確認のため再検したCTで腫瘍が長径0.6 cmまで縮小していた.PET-CTにおいても4月時点と比較し6月の再検査では集積を認めなかった.予定手術は中止とし,経過観察していた.しかし10月のCTで腫瘍の再増大を認めた.改めて手術の方針となり,12月に手術を施行した.術後の病理診断では,肺扁平上皮癌pT1bN0M0,p-stage IA2であった.考察.腫瘍の自然消退の要因については様々な報告がある.本症例においては手術検体で制御性T細胞の増加を認め,腫瘍の再増大との関与が示唆された.肺癌が自然退縮した場合でも再増大する例もあり,慎重な経過観察が必要と考える.
索引用語:肺癌, 扁平上皮癌, 自然消退, 再増大, 手術

受付日:2021年8月22日
受理日:2021年11月15日

肺癌 62 (2):103─106,2022

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