タイトル
第62巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

簡易懸濁法を用いて胃瘻より投与したブリグチニブが有効であったALK陽性肺癌の1例

後藤 広樹1, 吉田 正道1, 三木 寛登1, 増田 和記1, 児玉 秀治1, 寺島 俊和1, 藤原 篤司1
1三重県立総合医療センター呼吸器内科

背景.ALK阻害薬はいずれも内服薬であるため,経口投与困難な症例ではその恩恵を受けることが難しい.そのような症例に対する方策として簡易懸濁法を用いた経管投与が挙げられるが,ブリグチニブをはじめとするALK阻害薬に対する簡易懸濁法や経管投与は確立されたものではない.症例.71歳男性.2015年に当科で多発脳転移,多発肺転移,左癌性胸水などを伴うALK陽性肺腺癌の診断に至った.クリゾチニブで治療を開始したが,約10ヶ月で腫瘍が増大したため,2次治療としてアレクチニブ投与を開始した.その後,約4年9ヶ月にわたり腫瘍は良好に制御されていたが,2021年2月より嚥下時のつかえ感が出現した.同症状は徐々に進行し,2021年3月に水分以外の経口摂取が困難となった.上部消化管内視鏡,CTによる評価の結果,食道傍リンパ節の転移巣による食道狭窄が原因と判明した.ALK阻害薬による治療を行うため,胃瘻を造設し,簡易懸濁法を用いてブリグチニブを投与したところ,食道狭窄の改善を得られ,固形物の再摂取が可能となった.結論.簡易懸濁法を用いて胃瘻から投与したブリグチニブが奏効したALK陽性肺癌の1例を経験した.
索引用語:ALK陽性肺癌, ブリグチニブ, 簡易懸濁法, 経管投与

受付日:2022年4月13日
受理日:2022年5月9日

肺癌 62 (4):341─344,2022

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