タイトル
第62巻第5号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

脳転移による痙攣を契機にたこつぼ型心筋症を発症した肺癌術後再発の1例

後藤 まどか1, 市川 靖久1, 坪内 秀樹1, 川角 佑太1, 福本 紘一2, 内山 美佳1, 森 正一1
1日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院呼吸器外科, 2名古屋大学大学院医学系研究科病態外科学講座呼吸器外科学

背景.たこつぼ型心筋症は1991年に土手らにより提唱された左室心尖部の無収縮と心基部の過収縮を呈し,たこつぼ様形態をとる心疾患である.手術や化学療法に関連した報告は散見されるが,痙攣,特に悪性腫瘍の脳転移による痙攣と関連したたこつぼ型心筋症は非常に稀である.症例.72歳,男性.X年2月,左上葉多形癌(pT2aN0M0)に対し左肺上葉切除術+縦隔リンパ節郭清(ND2a-1)を施行した.X年9月,痙攣と呼吸困難を主訴に救急搬送された.頭部造影MRIで左頭頂葉に浮腫を伴う脳腫瘍を認めた.心臓超音波で左室はたこつぼ様となり左室駆出率低下を認めることから,肺癌脳転移およびたこつぼ型心筋症と診断した.抗痙攣薬・抗凝固薬を開始し,速やかに心機能は改善し第14病日に自宅退院した.脳転移に対しガンマナイフを施行したが,現病の進行によりX+1年10月に永眠した.結論.肺癌脳転移に伴う痙攣による身体的ストレスから,たこつぼ型心筋症を発症した稀な症例を経験した.たこつぼ型心筋症は虚血性心疾患との鑑別に苦慮する場合もあり,早期診断による治療が肝要と考えられた.
索引用語:たこつぼ型心筋症, 脳転移, 肺癌, 多形癌, 痙攣

受付日:2022年4月1日
受理日:2022年5月16日

肺癌 62 (5):377─381,2022

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