タイトル
第62巻第5号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (1402K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

肺内気管支嚢胞壁から発生した肺癌の1例

加藤 雅人1, 山本 聡2, 小島 勝雄3, 山田 恭平4
1ひらまつ病院外科, 2高木病院呼吸器外科, 3唐津赤十字病院呼吸器外科, 4久留米大学医学部病理学講座

背景.気管支嚢胞の多くは縦隔に発生するが,稀に肺内に発生する.今回,肺内気管支嚢胞に発生した肺癌の1例を経験した.症例.58歳女性で喫煙歴あり.2021年4月頃から咳嗽と血痰が出現したため近医を受診.胸部X線では異常はなく,胸部CTで右下葉に6 cm大の多房性嚢胞を認めた.嚢胞壁には不整な壁肥厚があり,喀痰細胞診はclass IIIAであったが,FDG-PETでその肥厚部に高集積を認めたため,肺嚢胞壁に発生した肺癌が疑われた.2021年9月,胸腔鏡下嚢胞切除を行い,迅速病理で腺癌と診断され右下葉切除とND2a-2郭清術を施行した.病理組織学的には,嚢胞は内腔が多列線毛上皮に被覆された気管支嚢胞で,嚢胞壁肥厚部を中心に嚢胞壁に沿って伸展する腺癌を認め,肺内気管支嚢胞壁発生の浸潤性粘液腺癌(pT3N0M0)と診断された.現在術後9ヶ月再発なく経過観察中である.結論.肺内気管支嚢胞から発生した肺癌は,本邦では自験例を含め10例と稀である.気管支嚢胞に肺癌の合併が疑われたら,外科切除を考慮することが必要である.
索引用語:肺内気管支嚢胞, 肺癌

受付日:2022年3月3日
受理日:2022年7月4日

肺癌 62 (5):424─428,2022

ページの先頭へ