タイトル
第62巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

ALK-TKIシークエンスで治療したALK陽性肺扁平上皮癌の1例

小澤 亮太1, 倉石 博1, 武内 裕希1, 田中 駿ノ介1, 山本 学1, 長谷 衣佐乃1, 増渕 雄1, 里見 英俊2, 伊藤 以知郎2, 小山 茂1
日本赤十字社長野赤十字病院 1呼吸器内科, 2病理部

背景.肺扁平上皮癌でのALK(anaplastic lymphoma kinase)融合遺伝子陽性は稀であり,ALKチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の有効性は不明である.症例.49歳,女性.咳嗽と左鎖骨上窩リンパ節腫大で当院を受診した.左鎖骨上窩リンパ節の経皮的針生検により肺扁平上皮癌(cT4N3M1c,cStage IVB)と診断した.喫煙歴のない女性の扁平上皮癌で,かつ病勢が急速であることからoncogenic driverの存在を疑った.免疫染色およびFISHでALK融合遺伝子陽性と判明した.特発性血小板減少性紫斑病のため殺細胞性抗癌剤は投与困難であり,アレクチニブ,ブリグチニブ,ロルラチニブによるTKIのシークエンスで治療を行った.各薬剤で腫瘍縮小効果を認めたが,効果の持続は予想されたよりも短かった.診断から12ヵ月で永眠された.結論.ALK融合遺伝子陽性肺扁平上皮癌に対するALK-TKIの効果は限定的だが,治療選択肢になる.Oncogenic driverの存在を疑う背景がある場合,扁平上皮癌でもALK融合遺伝子の検索を行うことが勧められる.
索引用語:ALK融合遺伝子陽性肺扁平上皮癌, ALKチロシンキナーゼ阻害薬, アレクチニブ, ブリグチニブ, ロルラチニブ

受付日:2022年4月28日
受理日:2022年7月11日

肺癌 62 (7):1001─1008,2022

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