タイトル
第62巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

妊娠後期の女性に合併した進行ALK陽性肺腺癌の1例

小玉 勇太1, 高納 崇1, 廣島 正雄2, 都島 悠佑1, 後藤 希1, 中瀬 敦1, 田中 麻里1, 稲垣 雅康1, 伊藤 亮太1, 横山 俊彦1
1日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院呼吸器内科, 2新城市民病院総合診療科

背景.妊娠合併肺癌は非常に稀で,妊娠に関連する症状と誤認されたり,放射線画像検査が敬遠されやすく,ほとんどの症例は進行期に診断されている.症例.30代後半女性.妊娠26週頃から咳嗽が出現し,労作時呼吸困難や食思不振も自覚するようになった.妊娠37週に胸部X線検査が施行され,左全肺野の透過性低下を認め当科紹介入院となった.CTにて胸水を伴う左完全無気肺と両側肺門・縦隔リンパ節腫大,右肺の多発結節影を認めた.胸腔ドレナージを施行しつつ,翌日帝王切開にて児を娩出した.胸水検体で腺癌及びanaplastic lymphoma kinase(ALK)融合遺伝子が確認され,入院5日目からalectinibの投与を開始した.速やかな腫瘍縮小効果が得られ,1年以上維持している.また,児に腫瘍の発生はみられず,発育も正常である.結論.妊娠可能年齢女性における肺癌ではドライバー遺伝子変異陽性の頻度が高く,急速に進行する可能性がある.妊娠中でも呼吸器症状が遷延する場合は胸部X線などの検査を行うことが勧められる.また,児への転移を考慮して胎盤の病理学的検索や出生後の児の経過観察も重要である.
索引用語:妊娠合併肺癌, ALK陽性肺腺癌, アレクチニブ

受付日:2022年3月12日
受理日:2022年7月19日

肺癌 62 (7):1009─1013,2022

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