タイトル
第62巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

傍腫瘍性神経症候群として発症し免疫チェックポイント阻害薬の関与が疑われた辺縁系脳炎の1例

古山 達大1, 上田 将秀1, 岡田 あすか1, 羽藤 沙恵1, 綿部 裕馬1, 乾 佑輔1, 茨木 敬博1, 美藤 文貴1, 竹中 英昭1, 長 澄人1
1大阪府済生会吹田病院呼吸器内科

背景.担癌患者に発症した辺縁系脳炎の報告は少ないが,今回肺癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の治療後に辺縁系脳炎を発症し,ステロイドや抗癌剤治療により改善した症例を経験したので報告する.症例.72歳男性.嗄声を主訴に受診,左肺門部に見られた腫瘤から経気管支肺生検にて未分化な組織像を認めた.非小細胞肺癌stage IVBに対してX-3年11月からX-1年8月までpembrolizumabを含めた抗癌剤治療を行い,PRを維持していた.X年1月末に健忘症状が出現し,頭部MRIで両側側頭葉に高信号を認め辺縁系脳炎と診断した.傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurological syndrome:PNS)やimmune-related adverse eventsなどの可能性を考えステロイド投与を行ったところ症状は改善傾向となった.胸部CTで新たに縦隔リンパ節腫大(#4R)を認めたためendobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspirationを施行した.病理結果は非常に未分化な組織であり,組織型の特定には至らなかったが原発巣の病理所見と類似しており転移と考えられた.2次治療として抗癌剤投与を開始し,神経症状はさらに改善した.結論.PNSは腫瘍に先行して症状が出現することが多く,ステロイドの反応性は乏しいとされている.本症例は神経症状が遅れて出現したことやステロイドが奏功したことからPNSとしては典型的な経過ではなく,辺縁系脳炎の発症にpembrolizumabも影響を与えた可能性が考えられた.
索引用語:肺癌, ペムブロリズマブ, 自己免疫性脳炎, 傍腫瘍性神経症候群, 辺縁系脳炎

受付日:2022年4月19日
受理日:2022年8月25日

肺癌 62 (7):1048─1055,2022

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