タイトル
第63巻第1号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (949K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

化学療法による長期奏効後,10年で再発を認めた上皮型悪性胸膜中皮腫の1例

橋田 恵佑1, 大塚 浩二郎1, 田中 悠也1, 稲尾 崇1, 門田 和也1, 桝屋 大輝1, 田代 敬2, 伊藤 利江子2, 鈴木 雄二郎1
神鋼記念病院 1呼吸器センター, 2病理診断科

背景.アスベスト曝露関連疾患である悪性胸膜中皮腫は免疫チェックポイント阻害薬の登場など治療選択肢が近年増えてはいるが,依然として予後不良の疾患である.一方で長期生存例が報告されるなど,その経過は多様である.本症例は,化学療法1レジメンのみで長期奏効が得られた後,10年経過後に再発を認めた.症例.90歳,男性.アスベスト曝露歴あり.X-10年に労作時呼吸困難を主訴に当院に紹介となり,胸腔鏡下胸膜生検で上皮型悪性胸膜中皮腫(cT1N0M0 stage IA)と診断した.カルボプラチンおよびペメトレキセドによる化学療法を4コース施行した.PETは施行していないものの半年毎のCT画像による経過観察では長期に再発を認めなかった.X年に施行した胸部CTにて縦隔リンパ節の腫大ならびに右側胸部に皮下結節を認めた.皮下結節は視診上,初診時の胸腔鏡の挿入部位に一致しており,同部位の生検を行い再発と診断した.結論.予後不良の悪性胸膜中皮腫の中に本症例のように化学療法が奏効し,長期無増悪を得られる例があるが,再発を念頭に経過観察していく必要がある.
索引用語:悪性胸膜中皮腫, 化学療法, 長期奏効, 再発

受付日:2022年4月13日
受理日:2022年9月8日

肺癌 63 (1):45─51,2023

ページの先頭へ