タイトル
第63巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

ダブラフェニブ+トラメチニブ投与中に完全房室ブロックと共に左室収縮機能障害を呈したがダブラフェニブ単剤にすることで治療継続できた1例

細谷 龍作1, 坂下 博之1,2, 山田 貴之1, 澤田 淳1, 熊谷 隆1, 泉 誠1, 渡部 春奈1, 鴨志田 達彦1, 安田 武洋1, 富永 慎一郎1
横須賀共済病院 1呼吸器内科, 2化学療法科

背景.非小細胞肺癌におけるBRAF遺伝子変異陽性例はまれだが高い奏効率,全生存期間の延長効果が期待できるため,一次治療でダブラフェニブ+トラメチニブが推奨されている.症例.81歳男性.健診で右下肺野に結節影を指摘された.原発性肺癌が疑われ,精査にてBRAF遺伝子変異陽性肺腺癌と診断した.病期はcT4N3M0,cStage IIICであり,一次治療としてダブラフェニブ+トラメチニブを開始した.治療開始後3か月で下腿浮腫,労作時呼吸困難が出現した.完全房室ブロックを認め,心エコーにて左室駆出率が治療開始以前の61.3%から39.9%まで低下していた.ダブラフェニブ+トラメチニブを中止し,ペースメーカー植込み術,心臓カテーテル検査を行った.他に明らかな原因が特定できず,ダブラフェニブ+トラメチニブによる有害事象が疑われた.薬剤中止で左室駆出率は改善したが2か月後に原発巣が増大した.ダブラフェニブのみ減量して再開した.その後心障害の出現なく,4か月間継続した.結論.ダブラフェニブ単剤にすることで分子標的薬治療を継続することができた.
索引用語:非小細胞肺癌, BRAF/MEK阻害薬, 左室駆出率低下, 完全房室ブロック

受付日:2022年8月9日
受理日:2022年9月9日

肺癌 63 (1):58─63,2023

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