タイトル
第63巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

菌球様陰影を呈した原発性肺癌の1例

河口 洋平1, 神澤 宏哉1, 矢崎 裕紀1, 松原 泰輔1, 小野 祥太郎1, 中嶋 英治1, 青柴 和徹2, 中村 博幸2, 森下 由紀雄3, 古川 欣也1
東京医科大学茨城医療センター 1呼吸器外科, 2呼吸器内科, 3病理部診断科

背景.空洞性病変の内部に菌球様の結節影を認める場合,単純性肺アスペルギローマが鑑別診断に挙がる.症例.58歳男性,1ヵ月以上続く咳嗽,呼吸困難,血痰を主訴に前医を受診した.胸部CTでは右S6に4.5 cmの空洞性の腫瘤影を認め,空洞内部に1.2 cmの類円形の結節を認めた.病変の末梢側は広範な肺炎像を呈しており,単純性肺アスペルギローマによる菌球形成と肺炎の診断で抗菌薬および抗真菌薬を開始した.その後通院が中断され,4ヵ月後自覚症状の増悪を認め再度前医を受診した.肺炎は改善していたが,右S6の空洞性病変は5.0 cmに増大し空洞壁の部分的な肥厚を認めた.また空洞内部の類円形の結節も1.2 cmから4.0 cmと増大し菌球形成を疑う所見であった.抗アスペルギルス抗原は陰性であったが,画像所見および臨床経過から単純性肺アスペルギローマの増悪が疑われ当院へ紹介となり症状コントロール目的に外科的切除を施行した.胸腔鏡下右下葉切除+ND1bを施行し,病理診断は肺腺癌pT2aN1M0 stage IIBであった.結語.菌球様陰影を呈する原発性肺癌は稀であるが報告されている.抗真菌薬に反応しない菌球様陰影を認めた際は原発性肺癌の可能性も念頭に置いて治療方針を考慮する必要がある.
索引用語:肺腺癌, 単純性肺アスペルギローマ, 菌球様陰影

受付日:2022年7月15日
受理日:2022年11月7日

肺癌 63 (2):107─110,2023

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