タイトル
第63巻第2号目次 In Japanese

─ 編集後記 ─

編集後記

荒金 尚子
佐賀大学医学部附属病院呼吸器内科

ようやくCOVID-19も収束の兆しが見えてきたが、医療現場ではまだ気を抜けない状況が続いている。感染症法で5類に変更されてもその感染力が衰えるわけでもなく、COVIDに留意をしつつがん診療を行わなければならない綱渡は我々を疲弊させる。とはいえ、肺癌患者は減少するわけではなく、検診受診数の減少のためか進行例が増加し、治療に難渋するケースもまれではない。本巻では、悪性縦隔腫瘍に対する診断と集学的治療という極めて幅広いテーマについて簡潔にまとめたレビュー論文を筆頭に、1報の原著、7報の症例報告が掲載されている。免疫チェックポイント阻害剤効果予測はPD-L1免疫染色のみという心細い状況の中、この論文は炎症性マーカーに焦点を当て、その有用性について検討している。症例報告では、遠隔転移症例で全身療法と局所治療を併用した集学的治療が奏効した2症例の他、COVIDワクチン副反応のリンパ節腫大が肺癌症例ではステージ決定の判断を誤らせる危険性について警鐘を鳴らした論文も掲載されている。骨修飾薬の副作用として厄介な顎骨壊死の早期診断に骨シンチグラフィーが有用であった症例が報告されており、早期対応による治療効果についても知りたいところである。菌球形成に類似した肺腺癌の報告もみられた。CT画像は診断上重要な位置を占めるが、病理診断の裏付けが取れない場合は切除も検討する必要性を痛感させられた。上咽頭転移という稀な転移形式を示した肺腺癌の報告は初期研修医よりなされており、論文作成は教育面でも重要で、指導されたスタッフにも敬意を表する。カルチノイド症候群を伴った定型カルチノイドにエベロリムス、オクトレオチド併用療法が奏効した症例が最後の報告である。カルチノイドは治療抵抗性である事が多く、臨床的に参考になる報告である。コロナ禍で多忙を極める臨床現場からもこのように論文作成されていることに今後の肺癌診療に対して希望の光を見つけたような気がする。

肺癌 63 (2):146─146,2023

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