タイトル
第63巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

肺がん診療におけるAdvanced Care Planning

山根 弘路1, 越智 宣昭1, 瀧川 奈義夫1
1川崎医科大学総合内科学4

Advanced care planning(ACP)とは,「生命の危機に直面する患者と患者を支える家族・友人などの療養生活をともに送る人と医療従事者が,治療方針や療養場所,大切にしたい事柄などについて話し合い,患者の意思決定の代理決定が可能となるように患者の価値観や意向を共有する自発的なプロセス」であるが,呼吸器悪性腫瘍患者にACPを遂行する際には数多くの障壁が存在し,一部の患者ではACPを施行しにくい現状がある.呼吸器悪性腫瘍患者では一般論として,計画的なACPの実行は有効であるとされているものの,免疫チェックポイント阻害薬などの新規治療法が短期間で数多く開発されたことによる予後判定の不確実性や患者に内在する防衛機制と精神状態の不安定性の問題,また日本社会全体の特殊な死生観や医療者のコミュニケーションスキルの問題により,ACPは大きく影響を受ける.そのため,一部の患者では本来有益であるはずのACPが逆に患者の精神状態に悪影響を与え,その後の医療介入の障壁となりうる.ACPにかかわる全ての医療者はまずこれらの障壁の存在を十分に理解した上で,介入する必要がある.
索引用語:Advanced care planning, 呼吸器悪性腫瘍, 防衛機制, 死生観, コミュニケーションスキル

肺癌 63 (3):147─152,2023

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