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第63巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 原著 ─

日本肺癌学会による臨床試験統合データベースの構築と新規研究実施のためのデータ共有

小澤 雄一1,2, 山本 信之2, 山本 紘司3, 伊藤 健太郎4, 釼持 広知5, 林 秀敏6, 宿谷 威仁7, 藤本 大智2, 菅原 俊一8, 仁保 誠治9, 大江 裕一郎10, 岡本 浩明11, 中川 和彦6, 木浦 勝行12, 吉野 一郎13, 弦間 昭彦14
1浜松医療センター呼吸器内科, 2和歌山県立医科大学内科学第三講座, 3横浜市立大学臨床統計学講座, 4松坂市民病院呼吸器センター, 5静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科, 6近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門, 7順天堂大学医学部付属順天堂医院呼吸器内科, 8仙台厚生病院呼吸器内科, 9獨協医科大学呼吸器・アレルギー内科, 10国立がんセンター中央病院呼吸器内科, 11横浜市立市民病院呼吸器内科・腫瘍内科, 12岡山大学病院呼吸器・アレルギー内科, 13千葉大学大学院医学研究院呼吸器病態外科学, 14日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野

目的.臨床試験データはその高い精度により高い価値を持つが,日本ではこれまでほとんど統合的な活用がされていない.日本肺癌学会は,これらを集積集約し日本肺癌学会臨床試験統合データベース(JIDB)を構築することを計画した.方法.局所進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する根治的化学放射線療法に関して無作為化試験を実施した6つの臨床試験グループにデータ提供を依頼し,全てのグループから同意を得た.2019年8月から2021年6月にかけてデータを収集した.結果.8試験(JCOG9812,JCOG0301,NJLCG0601,OLCSG0007,WJTOG0105,WJOG5008L,SPECTRA,TORG1018)をJIDBの対象とした.3000以上のデータ項目は定義や単位を調整して408に統合した.症例数は1288例で,年齢中央値(範囲)は66(30~93)歳,性別(男性/女性)1064/224,組織型(扁平上皮がん/腺がん/その他のNSCLC/不明)517/629/138/4,病期IIIA/B 536/752であった.全集積例の生存期間中央値は24.6カ月,2年,5年,10年生存率は,51.1%,22.5%,13.8%であり,無増悪生存期間(PFS)中央値は9.5カ月で,2年,5年,10年のPFS率はそれぞれ22.4%,13.0%,9.1%であった.今後JIDBに関する情報を日本肺癌学会ホームページで公開し,学会会員から広く研究提案を募ることを計画している.結論.JIDBの構築は日本肺癌学会の主導により実現されつつある.このJIDBが今後多くの研究への端緒となり,肺がん治療のさらなる発展に貢献することが期待される.
索引用語:データベース, 局所進行期, 非小細胞肺がん, 日本肺癌学会

肺癌 63 (3):161─181,2023

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