タイトル
第63巻第4号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (1705K)
Article in Japanese

─ 総説 ─

肺がんの医療経済

後藤 悌1
1国立がん研究センター中央病院呼吸器内科

抗がん剤の需要が急増している中,日本の薬価制度によって,抗がん剤の薬価が比較的コントロールされている.新薬の薬価は製造原価に加えて販売費や営業利益が考慮され,がん領域では市場拡大再算定や特例拡大再算定によって価格が調整される.しかし,日本における医薬品の支出額が高いことが問題視されており,抗がん剤の高騰は世界的にも問題となっている.医療現場において費用対効果が考慮されないモラルハザードと,科学的に有効な治療法が必ず保険適応となり償還される制度が,日本で医薬品の使用が多い理由である.日本の医薬品承認・償還制度は世界的に評価されているが,将来の負担を先送りしている実態がある.医療費は社会保険料,患者負担,一般財政によって支出され,公的資金は全体の40%を占めているが,現在の社会保障制度は持続可能なものではなく,コスト削減の研究が必要である.しかし,患者にも医療者にも低額で新規治療薬を使用できる社会が維持できることが望ましい.持続可能な社会を築くためには,医療は社会と一体となって取り組む必要がある.
索引用語:薬価, 費用対効果, 薬価算定方式

肺癌 63 (4):275─279,2023

ページの先頭へ