タイトル
第63巻第4号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (2630K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

肺転移巣生検で診断し得た血清prostate-specific antigen正常前立腺癌の1例

野亦 悠史1, 橋本 久実子1, 成田 久仁夫1, 新井 義文2, 前多 松喜2
豊橋市民病院 1呼吸器外科, 2病理診断科

背景.前立腺癌の肺転移が臨床的に発見される症例は5~8%程度と稀である.また,prostate-specific antigen(PSA)は前立腺癌に対して鋭敏な腫瘍マーカーであり,遠隔転移を有する場合,陽性率は90%程度とされる.症例.72歳男性.他疾患フォロー中の胸部CTで,右上下葉にそれぞれ13 mm,17 mmの境界明瞭な充実性結節影を複数認めた.転移性肺腫瘍の疑いで18F-FDG PET/CTを施行したが,肺病変以外に集積を認めず,各種腫瘍マーカーは陰性であった.炎症性結節の可能性を考慮し,経過観察となった.1年後,既存結節の増大と新生結節を認め,鏡視下肺生検を実施した.組織型は腺癌,免疫染色でPSA陽性,androgen receptor陽性であったことから,前立腺癌肺転移の診断を得た.肺生検の結果を受けて前立腺生検を施行し,原発巣である前立腺癌の診断確定に至った.結論.血清PSAが正常範囲内で肺転移が先行して発見された進行前立腺癌は稀であるが,高齢男性における前立腺癌の有病率は高く,転移性肺腫瘍を疑う肺結節を認めた際は原発巣として考慮すべきである.
索引用語:前立腺癌, 肺転移, 血清prostate-specific antigen

受付日:2022年12月13日
受理日:2023年4月6日

肺癌 63 (4):308─313,2023

ページの先頭へ