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第63巻第6号目次 Japanese/English

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─ 総説 ─

中皮腫診断における分子病理

鍋島 一樹1, 後藤 優子1, 瀧澤 克実1
1福岡徳洲会病院病理診断センター/病理診断科

近年,中皮腫診療を取り巻く状況は大きく変化してきた:患者の高齢化,従来の化学療法にまさる免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ+イピリムマブ併用の登場,細胞診や小さな生検組織・早期病変における病理診断の進歩である.本稿では(i)前浸潤性中皮腫mesothelioma in situを含む「良性および前浸潤性中皮腫瘍」というカテゴリーが初めて加えられたWHO 2021分類の概略,(ii)その新たな疾患単位の診断を可能とした中皮腫の遺伝子変異に基づく形態学的補助アッセイと(iii)細胞診への応用,さらに(iv)中皮腫瘍および中皮腫亜型と遺伝子変異について概説する.胸膜中皮腫の8割以上が胸水で初発することを考慮すると,細胞診の役割がより重要になってくると予測される.ただ補助アッセイの応用には注意点やpitfallもあり,慎重な運用と評価が望まれる.また,中皮腫診断は病理医のみでは難しく,病理組織と代替アッセイの結果を常に臨床所見・画像所見とともに評価・判断することが肝要である.
索引用語:中皮腫, BAP1, CDKN2A, MTAP, NF2

肺癌 63 (6):835─843,2023

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