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第63巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

肺癌術後放射線治療―手術と放射線治療による最適な局所治療の確立へ―

中川 加寿夫1
1国立がん研究センター中央病院呼吸器外科

非小細胞肺癌に対する術後補助療法の中で,術後補助化学療法は標準治療として確立している.一方,術後放射線治療は,局所制御に対しては有効だが,生存期間に対する有効性は示されていなかった.特に,病理病期I~II期(N0~1)では予後を悪化させる結果であった.しかしながら,病理病期III期(N2)では,様々な後ろ向き研究において,有効性が示されるようになり,その意義が見直されている.外科的な観点からは,病理病期III期(N2)では,系統的郭清範囲内のリンパ節再発が20%に認められるため,局所制御は手術のみでは不十分であるといえる.近年の2つの第III相比較試験(Lung ART試験,PORT-C試験)では,術後放射線治療による局所制御効果は示されたものの,生存期間に対する有効性は示されなかった.現在,JCOG1916(J-PORT)試験が進行中であり,その結果が待たれる.最近,術後補助療法に免疫チェックポイント阻害薬が適応となった.免疫チェックポイント阻害薬は放射線治療との相乗効果があり,術後補助化学療法→放射線治療→免疫チェックポイント阻害薬のような形の術後補助療法の確立も期待される.
索引用語:非小細胞肺癌, 術後補助療法, 術後放射線治療, 病理病期III期(N2), 免疫チェックポイント阻害薬

肺癌 63 (6):844─849,2023

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