タイトル
第63巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

症候性高カルシウム血症を認めたPTHrP産生肺癌の1切除例

井手 祥吾1, 椎名 隆之1, 市川 椋2, 加藤 あかね2, 中村 智次3, 髙砂 敬一郎1
伊那中央病院 1呼吸器外科, 2呼吸器内科, 3病理診断科

緒言.腫瘍随伴症候群の1つである高カルシウム(Ca)血症は,進行肺癌例に多く,外科切除例は比較的少ない.高Ca血症による食思不振と倦怠感を認めたが,肺切除後速やかに改善した肺癌の1例を経験したので報告する.症例.82歳男性,検診胸部X線異常で呼吸器内科を受診,CTで内部に空洞を伴う7.6 cmの腫瘍を左肺下葉に認めた.精査の結果,扁平上皮癌(cT4N0M0,stage IIIA)と診断,手術可否につき当科紹介となった.食思不振や倦怠感を併発,初診時は9.6 mg/dlであった補正Caは,術直前には12.1 mg/dlに上昇,intact PTH低下,PTHrP上昇を認め,PTHrP産生肺癌による症候性高Ca血症と臨床的に診断した.胸腔鏡下左下葉切除術を施行し,補正Caは速やかに低下,食思不振や倦怠感も改善し,術後第7病日に退院した.外来通院時の補正Caは正常範囲内であり,PTHrP低下を認めた.腫瘍の免疫染色では,腫瘍胞巣内部の角化細胞の一部にPTHrP陽性細胞を認めた.結論.PTHrP産生肺癌に伴う症候性高Ca血症は,腫瘍切除により速やかな改善が得られるため積極的な外科的切除が考慮される.
索引用語:副甲状腺ホルモン関連蛋白, 高カルシウム血症, 肺癌, 肺切除, 腫瘍随伴症候群

受付日:2023年3月29日
受理日:2023年6月12日

肺癌 63 (6):876─881,2023

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