タイトル
第63巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

ニボルマブ+イピリムマブ+プラチナ併用療法施行中,胸膜癒着術後にサイトカイン放出症候群をきたした肺腺癌の1例

角 俊行1,2, 十良澤 太門3, 鈴木 敬仁1,2, 越野 友太1,2, 池田 拓海1,2, 渡辺 裕樹1, 山田 裕一1, 千葉 弘文2
1函館五稜郭病院呼吸器内科, 2札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科, 3函館五稜郭病院循環器内科

背景.免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor;ICI)と化学療法の併用において,最も重篤な免疫関連有害事象(immune related adverse event;irAE)の一つにサイトカイン放出症候群(cytokine releasing syndrome;CRS)がある.CRSは生命を脅かす高炎症病態で発熱や多臓器不全を呈する.重症化を防ぐためにも早期治療介入が重要である.症例.72歳 男性.右下葉肺腺癌に対して手術が施行された.術後経過観察中に胸膜播種,癌性胸膜炎で再発したため,ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法で治療を開始した.大きな有害事象はなく経過したが,day 27に胸水貯留による呼吸困難のため入院した.胸腔ドレナージ後,day 35に胸膜癒着術を施行した.Day 38より高熱が持続し,day 45に意識障害と多臓器不全を呈した.CRSが疑われたため,ステロイドパルス,トシリズマブで治療し症状は改善した.一時病態は安定したが,ニューモシスチス肺炎で死亡した.結論.ICIと化学療法の併用療法中は,CRSのような重篤なirAEの発症に対する留意と,迅速な対応と適切なマネージメントが必要である.
索引用語:肺腺癌, サイトカイン放出症候群, 胸膜癒着術, ニボルマブ, イピリムマブ

受付日:2023年7月27日
受理日:2023年8月28日

肺癌 63 (7):971─976,2023

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