タイトル
第63巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

術後16年目に気管分岐下リンパ節に孤立性転移を認めたEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌の1例

加藤 雅人1, 山田 恭平2, 大島 孝一2
1ひらまつ病院外科, 2久留米大学病理学講座

背景.肺癌の手術後にgefitinibを長期投与し,術後16年目に気管分岐下リンパ節に単独で再発したepidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子変異陽性肺腺癌の1例を経験した.症例.81歳女性.16年前に呼吸困難感を主訴に近医を受診.胸部X線で右胸水貯留を認め,胸部CTで右肺上葉に3 cm大の腫瘍と胸膜播種を認めた.右肺上葉腺癌,cT3N1M1a,stage IVaと診断し,gefitinibを開始した.治療開始1ヵ月後には胸水の消失と原発巣の縮小を認めたためサルベージ手術を行った.術後もgefitinibを継続したが,再発なく長期経過した.初回手術から16年後に腫瘍マーカーの上昇を認めたため精査を行い,左乳癌と気管分岐下リンパ節腫大を認めた.左乳癌に対して左乳房切除と気管分岐下リンパ節切除を一期的に行い,リンパ節は組織学的に16年前に手術した肺腺癌の転移と診断された.術後はafatinibの投与を行い,手術から1年11ヵ月無再発生存中である.結論.Gefitinibを10年以上の長期投与と肺癌術後16年目に再発した症例は稀であり,長期間服用後の耐性化要因の検索など,さらなる詳細な検討が必要である.
索引用語:EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌, Gefitinib, 晩期再発

受付日:2023年7月5日
受理日:2023年8月31日

肺癌 63 (7):977─982,2023

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