タイトル
第63巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

ロルラチニブによる重症の精神病症状をきたした1例

國政 啓1, 和田 信2, 松島 章晃3, 田宮 基裕1, 井上 貴子1, 川村 卓久1, 宮崎 暁人1, 西野 和美1
大阪国際がんセンター 1呼吸器内科, 2心療・緩和科, 3阪南病院精神科

背景.ロルラチニブは優れた抗腫瘍効果と中枢病変への制御能を示すが,特有の毒性として中枢神経障害が報告されている.今回,我々は同薬剤による重篤な精神病症状を呈した1例を経験し,報告する.症例.32歳男性,非喫煙者.精神障害の既往はない.ALK融合遺伝子を有する進行期肺腺癌と診断し,アレクチニブによる治療を5年6ヶ月にわたり受けていた.癌性髄膜炎にて腫瘍の進行を認め,二次治療としてロルラチニブを導入したところ,内服開始後8日目から思考のまとまりのなさと不眠,不安,情緒の不安定が生じ,9日目に幻覚妄想を伴う急性錯乱状態となって,3階の自宅マンションから投身行為に至った.高エネルギー外傷は認めず,休薬と精神科専門病院での抗精神病薬投与を含む入院加療により精神症状の改善を認めた.5年間の通院中も類似した症状は認めなかったため,ロルラチニブにより惹起されたGrade 4精神障害と診断した.結論.極めて稀ではあるが,ロルラチニブにより重篤な精神症状をきたすことがあるため,導入の際には患者と家族に十分説明する必要があり,強度の精神症状を認める場合は精神科医師との連携が必要になる.
索引用語:ALK融合遺伝子, ALK阻害剤, ロルラチニブ, 精神障害, 精神病

受付日:2023年8月25日
受理日:2023年9月9日

肺癌 63 (7):983─987,2023

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