日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL
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原著
慢性呼吸器疾患患者における肺炎球菌23価ワクチンによるStreptococcus pneumoniaeの薬剤耐性防止効果の検討
小林 信明1), 綿貫 祐司1), 宮沢 直幹1), 工藤 誠1), 井上 聡1), 佐藤 隆1), 三科 圭1), 高橋 宏2), 金子 猛3), 石ヶ坪 良明4)
〒236-0004 神奈川県横浜市金沢区福浦3-9
1)横浜市立大学付属病院呼吸器内科
2)神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器科
3)横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター
4)横浜市立大学大学院病態免疫制御内科学
要 旨
目的:肺炎球菌23価ワクチン接種によるS. pneumoniaeの薬剤耐性防止効果を検討する.方法:60歳以上の慢性呼吸器疾患患者を対象とし,希望者に肺炎球菌23価ワクチンの接種を行い,接種群(722人)と非接種群(872人)で,接種前1年間とその後5年間に各患者群の喀痰から分離されたS. pneumoniaeの薬剤感受性と耐性遺伝子出現状況を比較検討した.結果:接種前1年間のS. pneumoniae分離数は接種群で24株,非接種群で18株であった.また,接種後5年間では接種群で53株,非接種群で46株であった.接種群におけるペニシリンG耐性菌の比率は接種前16.7%から接種後7.5%に低下していたのに対し,非接種群では5.5%から15.2%へ上昇していた.接種後に分離された株の遺伝子変異解析では,pbp1a+pbp 2x+ pbp 2b全変異を有する変異株の比率が接種群で28.6%であったのに対し,非接種群で53.3%であり接種群で低率であった.結論:肺炎球菌23価ワクチン接種によりペニシリン耐性S. pneumoniaeが減少する可能性が示唆された.
キーワード:肺炎球菌23価多糖体ワクチン, ペニシリン耐性肺炎球菌, 多剤耐性肺炎球菌, ペニシリン結合蛋白
受付日:平成21年3月10日
日呼吸会誌, 47(12): 1063-1069, 2009
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