日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL
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Article in Japanese
症例
速やかに自然消退を認めたIgG4陽性の肺炎症性偽腫瘍の1例
阪下 健太郎1), 高森 幹雄1), 村田 研吾1), 和田 曉彦1), 藤田 明1), 江夏 一彰2)
〒183-8524 東京都府中市武蔵台2-8-29
1)東京都立多摩総合医療センター呼吸器科
2)同 検査科
要 旨
症例は72歳男性.3カ月以上続く咳嗽と微熱,体重減少を主訴に受診.胸部X線写真上左S8に径5 cm大の境界明瞭な腫瘤影を認め,気管支鏡を施行.Transbronchial lung biopsyにてIgG4陽性形質細胞の浸潤を伴う肺炎症性偽腫瘍が強く疑われた.4週間後に胸部X線写真にて腫瘤影はほぼ消失し症状も軽快していた.IgG4陽性形質細胞の浸潤を認める肺炎症性偽腫瘍にはステロイドの治療が奏功することが明らかとなってきている.短期間に自然消退したIgG4陽性肺炎症性偽腫瘍は報告が少ないが,肝臓の炎症性偽腫瘍や自己免疫性膵炎等,他のIgG4関連硬化性疾患では自然消退例の報告が散見されており,自然消退例が潜在している可能性がある.本疾患におけるIgG4と自然消退との関連性について文献的考察を加えた.
キーワード:肺炎症性偽腫瘍, IgG4関連硬化性疾患, 腫瘍の退縮
受付日:平成22年2月3日
日呼吸会誌, 49(3): 172-177, 2011