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Article in Japanese

原著

胸膜炎を合併した肺非結核性抗酸菌症の検討

市木 拓1), 植田 聖也2), 渡邉 彰2), 佐藤 千賀2), 阿部 聖裕2)

〒791-0281 愛媛県東温市横河原366
1)独立行政法人国立病院機構愛媛病院内科
2)同 呼吸器科

要 旨

肺非結核性抗酸菌症では胸膜炎の合併は少ないとされるが,その詳細は明らかでない.当院を受診した肺非結核性抗酸菌症304例を対象に,胸膜炎合併の現状について検討した.その結果,9例,本症の3%において他に原因をもとめられない胸水貯留を認め,本症による胸膜炎と診断した.そのうちドレナージを要するほどの大量胸水貯留例は1例,0.3%,気胸に合併した症例は2例,0.7%と少数であった.胸膜炎合併例の肺病変は,広範な病変や有空洞例が多く見られ,全例Mycobacterium avium complex(MAC)症であった.本症による胸膜炎の特異的診断は困難であるが,胸水中の非結核性抗酸菌検出,胸水細胞分類でリンパ球優位,adenosine deaminase(ADA)高値,治療による胸水の消失などのいずれかの所見がみられた症例が多く,これらは本症による胸膜炎の診断を支持する所見と考えられた.

キーワード:肺非結核性抗酸菌症, 胸水, 胸膜炎

受付日:平成23年4月25日

日呼吸会誌, 49(12): 885-889, 2011