日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

書誌情報

 Full Text of PDF (1267k)
Article in Japanese

症例

Pulmonary tumor thrombotic microangiopathyによる急性呼吸不全を呈し,血清vascular endothelial growth factor-Dの上昇を認めた胃癌の1剖検例

竹崎 彰夫1)*, 新井 徹1)2), 井上 義一2), 西山 明秀1), 北市 正則2)3), 林 清二1)

〒591-8555 大阪府堺市北区長曽根町1180番地
1)国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科
2)同 臨床研究センター呼吸不全・難治性肺疾患研究部
3)同 病理
現 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部呼吸器・膠原病内科学分野

要 旨

症例は49歳,男性.突然,労作時呼吸困難が出現し,数日後に当院を受診したが,急速な増悪を認めたため,その9日後に緊急入院した.SpO290%(4 L酸素吸入),胸部HRCTでびまん性に小葉中心性粒状陰影,分岐状陰影の増強を認め,心エコーでは著明な右心室拡大,推定肺動脈圧上昇を認めた.造影CTでは下肢,肺動脈中枢部の血栓を認めなかった.急速に呼吸不全が進行し,入院後約14時間の経過で死亡した.剖検にて胃癌と肺野末梢の細動脈の腫瘍塞栓と血管内の器質化病変が確認され,pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)と診断した.入院時の血清vascular endothelial growth factor(VEGF)-Dが高値を示したが,剖検肺組織の免疫染色ではPTTM病変部にVEGF-Dは確認されなかった.PTTMの病態へのVEGF-Dの関与については今後の検討が必要と考えられた.

キーワード:血管内皮増殖因子, PTTM, 急性呼吸不全, 肺高血圧, 胃癌

受付日:平成23年2月8日

日呼吸会誌, 49(12): 890-896, 2011