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Article in Japanese

症例

体位性低酸素血症が診断の契機となった重症筋無力症の1例

斎藤 美和子, 新妻 一直

〒965-8555 福島県会津若松市城前10-75
福島県立会津総合病院内科

要 旨

体位性低酸素血症が契機となり重症筋無力症(MG)と診断された症例を経験した.症例は62歳の男性.2008年12月初旬から左眼の複視が出現し,糖尿病性神経症と診断された.12月中旬から臥位時に呼吸困難が出現し当院入院.胸部レントゲンで両側横隔膜の挙上,胸部CTにて下肺野無気肺と前縦隔腫瘍を認めた.血液ガス分析にて,臥位では座位時に比して低酸素血症,高炭酸ガス血症,A-aDO2の開大を認め,体位性低酸素血症と診断.複視が悪化したため眼科と神経内科に紹介したところ,抗アセチルコリンレセプター抗体陽性,テンシロンテスト陽性でMGと診断した.テンシロンテスト時に臥位時の呼吸困難も改善し,体位性低酸素血症は,MGによる横隔膜筋の筋力低下から出現したと考えた.MGの呼吸不全は一般的に急性劇症型でクリーゼとして知られているが,本症例のように,体位性低酸素血症として発症する例もあり留意すべきと思われた.

キーワード:体位性低酸素血症, 重症筋無力症, 横隔膜, 呼吸不全, 縦隔腫瘍

受付日:平成23年3月9日

日呼吸会誌, 49(12): 903-907, 2011