日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

症例

全身転移を来たし悪性の経過を辿ったsolitary fibrous tumorの1例

池田 智弘, 和田 奈緒子, 野村 眞欣, 田宮 貞宏, 牛島 正人

〒865-0064 熊本県玉名市中1950番地
公立玉名中央病院

要 旨

症例は80歳の女性.平成18年10月中旬より背部痛が出現し近医を受診した.胸部レントゲン写真で左中肺野に腫瘤影が見られ当院へ紹介となった.11月下旬にコンピューター断層写真(CT)ガイド下肺生検を施行し,病理検査の結果solitary fibrous tumorと診断した.全身検索の結果脊椎,肋骨,大腿骨,恥骨に多発転移を認めた.高齢であるため化学療法は行わず,転移巣への放射線治療のみ行った.その後も眼窩,肝臓,肩甲骨,上腕骨などに新たな転移が出現し放射線治療を追加した.平成19年9月に肺炎を併発し,10月に永眠された.solitary fibrous tumorは大部分は良性であるが本例のように悪性の経過を辿る場合もある.呼吸器腫瘍を診療する際にはこのような症例の存在も念頭に置くべきと考えられるため,文献的考察を加えて報告する.

キーワード:孤立性線維性腫瘍, 全身転移

受付日:平成23年3月18日

日呼吸会誌, 49(12): 913-916, 2011