日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

書誌情報

 Full Text of PDF (1032k)
Article in Japanese

症例

肺炎症性偽腫瘍の診断後10年の経過中に肺病変の悪化と下垂体病変が出現しIgG4関連疾患と考えられた1例

長井 賢次郎1), 原 悠1)2), 新海 正晴1), 後藤 秀人1), 星野 昌子1), 渡邉 恵介1), 山口 展弘1), 川名 明彦2), 石ヶ坪 良明3), 金子 猛1)

〒232-0024 神奈川県横浜市南区浦舟4-57
1)横浜市立大学附属市民総合医療センター呼吸器病センター
2)防衛医科大学校内科学講座2感染症・呼吸器
3)横浜市立大学大学院病態免疫制御内科学

要 旨

症例は71歳の男性.2001年8月に左胸水貯留・胸膜肥厚のため開胸下胸膜生検を施行し,炎症性偽腫瘍(Inflammatory pseudotumor,以下IPT)の診断を得て,全身ステロイド療法(経口PSL 30 mg/日)を開始した.漸減後7.5 mg/日で維持していたところ,2008年には下垂体後葉炎に伴う続発性中枢性尿崩症を併発,さらに,肺病変の経年的悪化と労作時呼吸困難を認めたため,病態再評価目的で2010年10月に当科に入院となった.肺病変は,高分解能CT(HRCT)上主に広義間質主体に分布し,血清IgG4 240 mg/dlと高値を示したことから,初診時胸膜生検標本を再評価したところ,lymphoplasmacytic typeのIPTであり,形質細胞の浸潤の中にIgG4陽性形質細胞を約10%認めた.その後,PSL 0.6 mg/kg/dayへ増量したところ,血清IgG4値の低下とともに,呼吸困難,肺・下垂体病変は共に改善が得られた.本症例は,IgG4関連疾患との相同性が高いことが報告されているlymphoplasmacytic typeのIPTであること,血清IgG4高値,下垂体病変形成,良好なステロイド反応性等からIgG4関連疾患であると考えられた.

キーワード:炎症性偽腫瘍, IgG4関連疾患, 下垂体後葉炎, 中枢性尿崩症

受付日:平成23年4月4日

日呼吸会誌, 49(12): 922-928, 2011