日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

書誌情報

 Full Text of PDF (655k)
Article in Japanese

症例

ANCA関連肺疾患との鑑別を要したAIDS関連ニューモシスチス肺炎の1例

竹田 奈穂子, 一安 秀範, 貴嶋 晃子, 野津手 大輔, 税田 直樹, 興梠 博次

〒860-8556 熊本市本荘1-1-1
熊本大学医学部附属病院呼吸器内科

要 旨

症例は41歳男性.約3カ月前から発熱と下痢を認めていた.その後,顔面や四肢に皮疹が出現し某内科にて薬剤性ループスと診断され,副腎皮質ステロイドの投与を受けていた.1週間前から労作時呼吸困難を自覚し前医を受診したところ肺炎の診断にて近医入院となった.ニューキノロン剤の点滴治療を受けたが改善せず,精査目的で当科に転院となった.胸部HRCTでは,びまん性斑状すりガラス陰影に加えて網状影,線状・索状影,牽引性気管支拡張像,subpleural curvilinear shadowを認め,MPO-ANCA陽性であり肺病変はANCA関連肺疾患を考えた.入院後に,梅毒感染の既往,口腔カンジダ症,帯状疱疹,B型肝炎,サイトメガロウイルス感染が確認され,HIV抗体陽性,HIV-1 RNA陽性でありAIDSと診断した.加えて,気管支肺胞洗浄にて多数のPneumocystis jiroveciiを認めニューモシスチス肺炎の合併を確認した.HIV/AIDSでは,MPO-ANCAを含め多彩な自己抗体が産生されることが知られており,肺の間質性病変の診断に際して膠原病関連間質性肺炎とニューモシスチス肺炎などの日和見感染症の鑑別が重要と考えられた.

キーワード:ニューモシスチス肺炎, AIDS, MPO-ANCA, ANCA関連肺疾患

受付日:平成23年4月4日

日呼吸会誌, 49(12): 929-935, 2011