日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

症例

抗体価と免疫組織化学的染色で診断した,びまん性肺胞傷害合併A型インフルエンザ肺炎の1例

石黒 卓1), 高柳 昇1), 清水 禎彦2), 河端 美則2), 柳澤 勉1), 杉田 裕1)

〒360-0105 埼玉県熊谷市板井1696
1)埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科
2)同 病理診断科

要 旨

症例は58歳男性,咳嗽,発熱,筋肉痛,呼吸困難を主訴に近医を受診し,胸部単純X線で異常陰影を認めたため,当センターへ入院した.胸部CT検査では両側性のすりガラス状陰影および浸潤影を呈し,インフルエンザ迅速抗原検査,気管支肺胞洗浄液を用いた新型インフルエンザウイルスreverse transcriptase-polymerase chain reaction法は陰性であった.経気管支肺生検の結果はびまん性肺胞傷害であった.急性間質性肺炎と診断し,ステロイド治療を行った.また臨床像からはインフルエンザ肺炎が否定できなかったため,オセルタミビルも投与した.その後,改善が得られ,退院した.A型インフルエンザウイルスに対する抗体価の上昇を確認し,経気管支肺生検の標本を再評価後に免疫組織化学的染色をしたところ気管支・細気管支上皮にA型インフルエンザウイルス抗原陽性だったため,インフルエンザ肺炎に診断を変更した.急性間質性肺炎と診断される症例の中にインフルエンザ肺炎が含まれている可能性がある.

キーワード:インフルエンザ肺炎, びまん性肺胞傷害, 急性間質性肺炎, H1N1

受付日:平成23年4月18日

日呼吸会誌, 49(12): 942-948, 2011