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Article in Japanese

原 著

高炭酸ガス吸入負荷による乳酸・ピルビン酸・ケトン体の急性期変動について―健常成人による検討―

沈 在俊

〒143-0051 東京都大田区大森西6-11-1 東邦大学医学部内科学第2講座

要 旨

高炭酸ガス血症の組織代謝に及ぼす影響を検討するために10名の健常成人に対し7% CO2,21% O2及びN2バランスの混合ガスを約10分間吸入させ低酸素血症を伴わない急性の高炭酸ガス環境を作り,吸入前(C期),吸入後CO2がピ-クに達し定常状態を5分間維持した後(P期),吸入中止後吸入前とほぼ同じ状態に5分間維持した後(R期)の各期において静脈血中の乳酸・ピルビン酸・遊離脂肪酸・ケトン体を測定した.結果:ピルビン酸はC期からR期にかけて減少を示し,特にC期(0.66±0.17mg/dl)からR期(0.58±0.12mg/dl)にかけて有意な低下を示した.乳酸は増加傾向を示したが有意ではなかった.Lactate/pyruvate ratio(L/P ratio)はC期からP期,R期にかけて有意に増加した(C:12.87±2.46,P:13.96±2.29,R:16.25±3.76;p<0.05,p<0.01).しかし,ケトン体・ケトン体比・遊離脂肪酸には有意な変化は得られなかった.以上より,急性の高炭酸ガス血症は細胞内の代謝に変化をもたらすことが示唆され,高炭酸ガス血症も組織代謝に影響を及ぼす一つの要素に成ると考えられた.

キーワード:健常成人, 高炭酸ガス吸入負荷, 乳酸, ピルビン酸, ケトン体比

受付日:平成12年2月8日

日呼吸会誌, 39(5): 309-315, 2001