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Article in Japanese

症 例

びまん性肺胞障害併発時に KL-6値の上昇を認めた CA19-9陽性間質性肺炎の1剖検例

清水 雄至1), 田中 良樹2), 佐々木 惇3), 根本 俊和1)

〒370-2343 富岡市七日市643
1)公立七日市病院内科, 2)群馬大学医学部第1内科, 3)群馬大学医学部第1病理

要 旨

症例は73歳の女性.CA19-9産生性特発性間質性肺炎の経過観察中,急激に呼吸困難が増悪した.胸部X線,CT において,線状,網状影に加え,全肺野に斑状影が新たに出現した.経過中,血清 CA19-9値は高値にて推移したが,血清 KL-6値は増悪時に異常高値を示した.諸治療に反応なく,入院後5日目に死亡した.剖検肺は顕著な線維化に加え,非線維化領域肺胞内の硝子膜形成,出血,扁平上皮化生を認め,慢性間質性肺炎にびまん性肺胞障害を併発したと考えられた.抗 CA19-9抗体,及び抗 KL-6抗体を用いた免疫染色において,いずれの際も線維化領域の拡張した気腔内面を覆う細気管支上皮が陽性となり,同細胞からの CA19-9,KL-6産生が示唆された. CA19-9は肺全体の線維化や既存構造の破壊の程度の指標にはなりうるが,びまん性肺胞障害併発時では KL-6値の方が病態を反映しているものと考えられた.

キーワード:特発性間質性肺炎, CA19-9, KL-6, 免疫組織化学染色, びまん性肺胞障害

受付日:平成12年7月14日

日呼吸会誌, 39(5): 351-356, 2001