日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL
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Article in Japanese
症 例
蹲踞が誘因と考えられた急性肺血栓塞栓症の一例
比嘉 真理子, 大沼 静佳, 清水 邦彦
〒221-0821 神奈川県横浜市神奈川区富家町6-6 済生会神奈川県病院内科
要 旨
症例は糖尿病歴3年の69歳男性で,既往に脳梗塞と下肢閉塞性動脈硬化症があり加療中であった.坐ってしばらくテレビ鑑賞をした後,屈んでかなり窮屈な姿勢で車の床を掃除し急に体を起こした直後より呼吸困難が出現した.血液ガスでは PaO2,PaCO2の低下と血中 FDP と D ダイマーの上昇,プロテインC活性の低下,血小板第4因子の上昇を認めた.肺動脈造影で左肺動脈 A9+10の分岐側より末梢の血流杜絶を認め肺血栓塞栓症と診断した.下肢及び骨盤静脈造影で血栓は認めなかった.屈んだ姿勢を続けたことによる鼠径部の圧迫が下肢の血流停滞の誘因となり,急性肺血栓塞栓症を発症したと考えられるきわめて稀な症例を経験したので報告する.
キーワード:肺血栓塞栓症, 蹲踞, 血流停滞, 糖尿病
受付日:平成12年8月7日
日呼吸会誌, 39(5): 363-366, 2001