日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

症 例

肺の同一腫瘍内にMALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫と腺癌の併存を認めた1例

秋田 裕子1), 鈴木 雅之1), 小笠原 智彦1), 犬飼 朗博1), 新城 恵子1), 宮崎 幹規1), 山田 勝康1), 向山 憲男2)

〒466-8650 名古屋市昭和区妙見町2-9
1)名古屋第二赤十字病院呼吸器内科, 2)同 呼吸器外科

要 旨

症例は60歳女性,健診にて胸部異常陰影を指摘された.胸部 CT にて左下葉に35 mm 大の腫瘤影を認めた.経気管支生検で確定診断が得られなかったため,開胸肺生検を行った.術中病理迅速診断にて悪性リンパ腫と診断され,左下葉切除術を施行した.術後の免疫組織学的検討にてCD20,CD79a が陽性で IgM,κのモノクロナリティーを認め,肺 MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫と診断した.腫瘍のほぼ中央部に約10 mm にわたり高分化型腺癌の組織の併存を認めた.全身検索の結果,他の臓器には病変はみられず両者はいずれも肺原発と考えられた.我々の検索範囲内では肺の同一腫瘍内に MALT リンパ腫と腺癌の組織が併存していた症例の報告はなく,稀な症例と考えられたため報告した.

キーワード:肺 MALT リンパ腫, 腺癌, 免疫組織化学的染色

受付日:平成12年8月7日

日呼吸会誌, 39(5): 368-371, 2001