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Article in Japanese

症 例

エレース®吸入で発症し,抗核抗体陽性を示した薬剤誘起性間質性肺炎の1例

土居 裕幸, 中山 正, 田中 弘樹, 西久保 直樹, 河野 徹也

〒780-0850 高知市丸ノ内1丁目7-45 高知市立市民病院呼吸器科

要 旨

症例は喉頭癌による喉頭全摘術後の73歳男性で喀痰の増加と発熱のため当科に紹介された.胸部レントゲン写真で両側に斑状のすりガラス影が見られた.肺炎として抗生剤の投与を行ったが症状やレントゲン上の陰影が増悪した.発熱の前日よりエレース®吸入がなされていたことから同薬による薬剤誘起性間質性肺炎が疑われ,エレース®を中止したところ速やかに解熱した.経気管支肺生検で肺胞中隔の肥厚,リンパ球の浸潤,II型肺胞上皮の腫大が見られた.気管支肺胞洗浄ではリンパ球数の増加が見られ,CD4/CD8比は0.3と低値であった.末梢血リンパ球を用いた薬剤によるリンパ球刺激試験でエレース®は著明な高値(stimulation index2127%)を示した.また,抗核抗体;640倍,抗一本鎖 DNA 抗体123.4IU/ml と高値であり,約10週後,症状軽快と共に抗体価の低下を認め,胸部レントゲン写真と他の臨床検査値異常も無治療で軽快した.これらの所見よりエレース®による薬剤誘起性間質性肺炎と診断した.

キーワード:エレース®, 薬剤誘起性間質性肺炎, 薬剤によるリンパ球刺激試験, 抗核抗体

受付日:平成12年8月7日

日呼吸会誌, 39(5): 372-376, 2001