日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

症 例

局麻下胸腔鏡を施行し良性石綿胸水と考えられた1例

金地 伸拓1), 肥山 淳一郎1), 堀田 尚克1), 塩田 雄太郎1), 今井 茂郎2)

〒737-8505 広島県呉市西中央2丁目3-28
1)呉共済病院内科
2)同 胸部心臓血管外科

要 旨

症例は92歳,男性で13年間の石綿曝露歴がある.主訴は呼吸困難で,平成13年9月,両側胸水貯留を認め,心不全治療に反応なく徐々に増加した.CTでは肺野に異常影はなく,胸膜の石灰化を認めた.胸水は両側ともリンパ球優位の浸出液であり,結核性胸膜炎を考え,抗結核剤の内服を開始したが効果を認めなかった.H14年3月1日,局所麻酔下で胸腔鏡を施行した.壁側胸膜にプラークを認めたが,胸膜面は平滑で悪性中皮腫などを疑う病変はなく,良性石綿胸水と考えられた.治療にステロイドを試みたところ,徐々に胸水は減少し,ステロイドが奏効した. 両側同時に大量の胸水貯留を来した良性石綿胸水はまれであり,報告する.

キーワード:良性石綿胸水, 内科的胸腔鏡, 局所麻酔下胸腔鏡, ステロイド治療

受付日:平成14年5月24日

日呼吸会誌, 41(6): 382-385, 2003