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Article in Japanese

症 例

気管支粘膜生検所見を検討した喘息症状を伴わないアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の1例

北 英夫1), 小林 良樹1), 山下 健三1), 安場 広高1)

〒569-1096 大阪府高槻市阿武野1-1-1
1)高槻赤十字病院第2呼吸器科

要 旨

症例は24歳男性.10~12歳時のみ小児喘息.1999年3月咳と微熱が続き,左上葉の浸潤影を指摘され抗結核剤治療を受け陰影は一時消失したが,2000年10月に再発し当院へ入院した.CTでは左上葉に周囲に浸潤影を伴う球状の陰影と中心性気管支拡張を呈していた.喘鳴は聴取せずフローボリューム曲線でも閉塞性障害なし.総IgEは6,084IU/mlと高値でアスペルギルスに対するIgE抗体と沈降抗体がともに陽性であった.気管支鏡では左B1+2が粘液栓子で閉塞し洗浄液よりAspergillus fumigatusが培養された.左上葉口で行った気管支粘膜生検の病理所見では,基底膜の肥厚,好酸球浸潤,気管支粘液腺肥大を認めた.ABPAと診断しプレドニンを30mgから漸減投与し陰影は消失した.治療終了の8カ月後,軽度の喘息症状を認めFluticasone dipropionateを開始したが,浸潤影の再発は認めていない.診断時に喘息症状のないABPAにおいても気管支粘膜では,喘息と同様の病変が生じていると考えられた.

キーワード:アレルギー性気管支肺アスペルギルス症, 気管支粘膜生検, 基底膜肥厚

受付日:平成14年10月15日

日呼吸会誌, 41(6): 411-415, 2003