日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

症例

柑橘類(マーコット)の種子誤嚥によって右上葉多発浸潤影が増悪・寛解を繰り返し,気管支異物に対する生体反応を証明しえた症例

森松 嘉孝1)2), 青木 由香1), 溝口 祐輔1)2), 北里 裕彦2), 相澤 久道2)

〒860-0008 熊本市二の丸1-5
1)独立行政法人国立病院機構熊本医療センター内科
2)久留米大学医学部第1内科

要 旨

誤嚥した柑橘類の種子が,右上葉入口部に陥頓したことによって,右上葉に多発浸潤影を繰り返した気管支異物症例を報告する.症例は柑橘類栽培業の76歳男性.検診にて胸部X線異常を指摘され,抗菌薬にて若干の改善を認めた.その後再び陰影が増強したため,気管支鏡検査を施行.右上葉入口部は浮腫によってスリット状に狭窄しており,異物が嵌頓していた.鉗子による異物除去後,陰影は消退し,異物は栽培している柑橘類(マーコット)の種子と判明した.病歴と後ろ向きの画像検討より,異物は1年半以上前から存在していたと思われた.高齢者では明らかな異物誤嚥の自覚がないこともあるため,繰り返す肺炎では気管支異物の可能性を考慮し,積極的な気管支鏡検査が必要と考え報告した.

キーワード:気管支異物, 肺多発浸潤影, 高齢者, 誤嚥, 気管支鏡

受付日:平成17年3月31日

日呼吸会誌, 43(12): 746-750, 2005