日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

書誌情報

 Full Text of PDF (94k)
Article in Japanese

症例

尿崩症を初発症状とした肺腺癌下垂体転移の1例

友田 義崇, 甲斐 知子, 稲田 順也, 宮崎 こずえ, 村井 博, 山岡 直樹, 倉岡 敏彦

〒730-0822 広島市中区吉島東三丁目2番33号
国家公務員共済組合連合会吉島病院内科
現 国家公務員共済組合連合会呉共済病院忠海分院

要 旨

症例は71歳男性,2004年6月頃より突然口渇,多尿が出現した.7月発熱を主訴に近医を受診したところ,胸部レントゲン上異常影を指摘され当院に入院した.水制限試験の結果中枢性尿崩症と診断され,頭部MRIで下垂体腫瘍を認めた.また胸部CTで右下肺野に結節影を認め精査の結果肺腺癌と診断した.下垂体腫瘍に対して広島大学病院脳神経外科を紹介し,生検の結果転移性下垂体腫瘍と診断されたため,肺腺癌の下垂体転移(T1N0M1 StageIV)と診断した.尿崩症と診断後デスモプレッシンの投与を行った.下垂体転移に対してγナイフ療法を行ったが症状のコントロールがつかなかった.また肺癌に対してはCBDCA+paclitaxelによる化学療法を施行したが原発巣の増大を認めたため現在docetaxcelによるセカンドラインを施行中である.下垂体転移による尿崩症を初発症状とする肺癌の症例は稀であることより文献的考察を加え報告する.

キーワード:肺癌, 下垂体転移, 尿崩症

受付日:平成17年4月5日

日呼吸会誌, 43(12): 751-754, 2005