日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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症例

多発性末梢性肺動脈分枝狭窄症の1例

瀬戸 武志, 田邉 信宏, 杉本 尚昭, 宮澤 裕, 笠原 靖紀, 黒須 克志, 滝口 裕一, 巽 浩一郎, 栗山 喬之

〒260-8670 千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-1
千葉大学大学院医学研究院加齢呼吸器病態制御学

要 旨

症例31歳女性.労作時呼吸困難(Hugh-Jones II度)を主訴として受診.18歳時,原発性肺高血圧症と診断されていた.挙児希望もあり肺高血圧の精査目的で2003年6月,当科受診.造影ヘリカルCTおよび肺動脈造影検査では両側主肺動脈とその末梢肺動脈に多発狭窄を認め,肺高血圧症を認めた.幼少時からの長い臨床経過や肺動脈造影所見,全身性血管炎を示唆する所見を認めないことから多発性肺動脈分枝狭窄症と確定診断した.本症例は小児期より症状を認め先天性と考えられた.病因として,家族性因子や母体妊娠中の風疹罹患等が報告されているが,本邦例では,本症例も含め病因が不明なものが多い.心奇形合併のない本症例を純型肺動脈分枝狭窄症という呼称で区別する場合があり,本邦において過去に報告も少なく貴重な症例と考えられた.本疾患の予後因子として肺高血圧の程度が関与すると言われており,避妊指導ならびに肺高血圧の進行に十分注意し,経過観察中である.

キーワード:肺動脈分枝狭窄症, 肺高血圧症, 風疹胎内感染

受付日:平成17年4月5日

日呼吸会誌, 43(12): 755-760, 2005