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Article in Japanese

症例

肝動静脈奇形を伴った両側の肺動静脈奇形に対しコイル塞栓術で治療した1例

高橋 守, 山田 玄, 澤住 知枝, 中村 直人, 藤井 偉, 猪股 慎一郎, 千葉 弘文, 高橋 弘毅

〒060-8543 札幌市中央区南1条西16丁目
札幌医科大学医学部内科学第3講座

要 旨

症例は57歳,女性.近医で39歳時に健康診断を契機に胸部異常影を指摘され,両側の肺動静脈奇形(以下,PAVM)を合併した遺伝性出血性末梢血管拡張症(以下,HHT)と診断された.その後,2度の一過性脳虚血がありPAVMがその原因と推定された.PAVMの治療適応の検討のために当科に紹介となり2008年2月9日に入院となった.精査の結果,右上葉S3aと左下葉S9aにPAVMを認め,さらに肝動静脈奇形(以下,HAVM)を認めた.HAVMの合併により静脈還流の増加が予想され,PAVMの塞栓術後に右左シャントが消失し,肺動脈血流の増加から肺高血圧を生じ,右心不全に進展する可能性が考えられた.そのため左右のPAVMの治療は経カテーテル的コイル塞栓術を1カ月間隔で二期的に施行した.本症例では,治療後約6カ月の経過ではPAVMは縮小し,右心不全の発症も認められなかった.HHTに合併したPAVMの塞栓術の適応は他臓器の血管奇形を検索した上で,個々の症例に応じて慎重に判断する必要があると思われる.

キーワード:肺動静脈奇形, 肝動静脈奇形, 遺伝性出血性末梢血管拡張症, コイル塞栓術

受付日:平成21年2月24日

日呼吸会誌, 47(12): 1103-1107, 2009