日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

症例

Wegener肉芽腫症の1例

石川 理惠1), 森本 耕三2), 生島 壮一郎1), 折津 愈1), 武村 民子3)

〒150-8935 東京都渋谷区広尾4-1-22
1)日本赤十字社医療センター呼吸器内科
〒204-8522 東京都清瀬市松山3-1-24
2)財団法人結核予防会複十字病院呼吸器内科
3)日本赤十字社医療センター病理部

要 旨

症例:73歳男性.2002年より気管支拡張症にて近医に通院していた.2003年3月喀血にて当院入院,喀痰よりP. aeruginosaが検出されたことから,気管支拡張症に伴う慢性気道感染の増悪と判断,レボフロキサシン(Levofloxacin;LVFX)投与にて改善を得た.2006年6月下旬より血痰と発熱あり,LVFX内服するも症状改善せず,再入院となった.各種抗生剤に反応せず,治療的診断としてミカファンギン(micafungin sodium;MCFG)を投与したところ,自他覚症状の改善を認めた.その後,PR-3 ANCAは陰性であったが,副鼻腔および気管支・肺生検にてWegener肉芽腫症と診断した.これまで抗結核薬や抗生剤が有効であったとする報告は散見されるが,我々が検索した限りではMCFGなどの抗真菌薬が反応したという報告はない.動物実験レベルではカンジダの菌体成分による血管炎誘発モデルがいわれており,本症例はWegener肉芽腫症の発症,進展に真菌が何らかの形で関与している可能性が示唆された.

キーワード:Wegener肉芽腫症, 抗真菌薬, ミカファンギン

受付日:平成21年3月9日

日呼吸会誌, 47(12): 1108-1114, 2009