日本呼吸器学会雑誌 ONLINE JOURNAL

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Article in Japanese

症例

神経性無食欲症患者に合併し,治療に難渋した緑膿菌による呼吸器感染症の1例

宇賀神 基1), 三輪 清一1), 須田 隆文2), 白井 正浩1), 早川 啓史1), 千田 金吾2)

〒434-8531 静岡県浜松市浜北区於呂4201-2
1)独立行政法人国立病院機構天竜病院呼吸器科
2)浜松医科大学第2内科

要 旨

神経性無食欲症の19歳女性.胸部単純写真にて左上肺野の空洞陰影を指摘され,精査目的で入院.体重は25 kgであった.炎症反応の上昇を認め,喀痰検査では抗酸菌は検出されなかった.肺膿瘍と診断し,スルバクタム/アンピシリンで治療を開始した.Pseudomonas aeruginosaが同定されたため,ドリペネムに変更したが,両下肺野に浸潤影が出現し,左胸水も認めた.シプロフロキサシンの追加と左胸腔ドレナージにて,浸潤影は改善したが,空洞陰影の拡大と内部の液面形成を認めた.気管支鏡検査にて左上区支から膿性分泌物の流出を認め,分泌物の除去にて,液面形成の消失と空洞の縮小を認めた.分泌物からはP. aeruginosaが同定された.神経性無食欲症に緑膿菌による呼吸器感染症を生じ,治療に難渋した症例であった.健常若年女性で同様の経過をとるとは考え難く,神経性無食欲症による免疫能の低下が関与しているものと考えられた.

キーワード:神経性無食欲症, 肺膿瘍, 緑膿菌

受付日:平成21年4月20日

日呼吸会誌, 47(12): 1126-1130, 2009